静止摩擦力(2)

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最大摩擦力(教科書p75)

前のページのように、引く力の大きさに応じて静止摩擦力が大きくなっていったら、いつまでたっても物体は動きません。
でも、実際は、引く力を大きくしていくと、いつか、あるところで物体は動き始めます。

静止摩擦力には「これ以上大きくならない」という上限があり、これを、「最大摩擦力」といいます。引く力がこれより大きくなると、物体は動き始めることになります。

これが最大、最大摩擦力」の大きさを、ここではと表すことにします。





静止摩擦係数
 最大摩擦力の大きさは、何によって決まるでしょう。
 物体を引いたときに、動き出しやすいか動き出しにくいかは、何が関係するでしょう。

接触の強さ … 物体の底面と床面との接触の強さです。
  重い物体ほど、動き出させることが大変です。これは、物体の底面と床面が、ギュッと接触しているからだと考えられます。
面の状態 … ざらざらしているとか、つるつるしているとか、油が塗ってある、乾いている、湿っている、木材である、鉄である、など、無数の面の状態があります。
 

上のの「物体の底面と床面との接触の強さ」は、物体と床が互いに押し合っている力なので、垂直抗力の大きさと考えることができます。
注意:「物体の底面と床面との接触の強さ」は、「物体にはたらく重力の大きさ」ではなく、「垂直抗力の大きさ」です。)


実験によると、最大摩擦力の大きさは垂直抗力の大きさに比例し、比例定数を(ミュー)とすると、


  
  教科書p75(48)式  
  
 

となります。
比例定数を、「静止摩擦係数」といいます。
上の式から、左辺の と右辺のは両者とも力で、同じ単位となるので、静止摩擦係数は、単位のない係数です。


静止摩擦係数は、面の種類や状態で決まる定数で、上の、の「面の種類や状態」による最大摩擦力の大きさの違いを表すことができます。

(例)静止摩擦係数のめやす(教科書p77表1、他より)
 接している物体  静止摩擦係数 
 鋼鉄と鋼鉄(乾燥)  0.78
 ガラスとガラス(乾燥)  0.94 
 銅とガラス(乾燥)  0.68 
 氷と氷(−12  0.3
 鋼鉄と氷  0.03
 鋼鉄とテフロン  0.04
 コンクリートとゴム   1.0

表の数値から、氷の上や、テフロン加工のフライパンが、すべりやすいことがわかります。
また、例えば、鋼鉄と鋼鉄は鉄道の車輪とレールを、コンクリートとゴムは道路とタイヤをイメージすると、静止摩擦係数の理解がしやすいでしょう。
なお、静止摩擦係数は、上の例にはありませんが、1より大きい値となることもあります。


  
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