仕事の原理・仕事率(1)

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  教科書p92〜93   


仕事の原理(教科書p92)

できるだけ楽に仕事をすることについて考えてみます。

図のように、Aくん、Bくんが質量〔kg〕の荷物を高さ〔m〕だけ持ち上げる仕事を考えます。



Aくんのする仕事
 Aくんは、荷物をまっすぐ上に引き上げます。
 Aくんが荷物を引き上げるのに最低限必要な力は、荷物にはたらく重力と等しい、〔N〕です。

<ポイント>
 重力と同じ力では荷物は持ち上がらないと思う人がいるかもしれません。そのとおりなのですが…。
 初めの一瞬だけ、より少しだけ大きな力で引き上げれば、荷物は上に動き出します。その後は重力と同じ力で引き続ければ、荷物は加速も減速もせず、ゆっくりと上昇しつづけることになります。
 

 さて、Aくんは、〔N〕の力で高さ〔m〕だけ荷物を引き上げるので、Aくんのする仕事は、

 〔J〕

となります。

Bくんのする仕事
 Bくんは、「真上に引き上げるより、斜面を使えば楽に引き上げることができるよ。」ということで、30°のなめらかな斜面を利用して荷物を引き上げます。
 荷物にはたらく重力の、斜面に平行な分力の大きさは、

  

ですから、Bくんが斜面を利用して荷物を引き上げるのに最低限必要な力は、荷物にはたらく重力の、斜面に平行な分力の大きさと等しい、

  

となり、Aくんの半分の大きさの力で荷物を引き上げることができます。

 ただし、Bくんが斜面上を荷物を引き上げる距離は、30°の斜面ですから

  2〔m〕

と、真上に引き上げる距離の2倍になります。

 よって、Bくんのする仕事は、



と、Aくんと同じ仕事となります。

このように

「仕事の原理」
 斜面や動滑車など、道具を使うと必要な力を小さくすることができる。
 しかしその分、力を加える距離は長くなり、仕事の量は変わらない。
 

 これを「仕事の原理」といいます。



教科書p92 問39(改)
水平となす角が 30°のなめらかな斜面上で、質量 10kgの物体を、斜面に沿ってゆっくりと 4.0m引き上げた。重力加速度の大きさを 9.8m/sとして以下の問いに答えよ。
(1) 加えた力の大きさは何Nか。
(2) この力がした仕事は何Jか。


<解答>
(1) 斜面が水平となす角が 30°だから、物体にはたらく重力の、斜面に平行な分力の大きさは、



よって、物体に加えた力の大きさは、
49 N


(2) この力がした仕事は、

 =49×4.0=196   答え 
2.0×10

 
<参考>
上の問題で、質量 10kgの物体を、斜面を用いずに同じ高さまで引き上げる仕事を求めます。
上の問題のように 30°の斜面にそって 4.0m引き上げる場合、高さ 2.0mまで引き上げることになります。



真上に物体を引き上げるのに必要な力は、荷物にはたらく重力と等しく、
   =10×9.8=98N

よって、物体を高さ 2.0mまで引き上げる仕事は、
   =98×2.0=196   よって 
2.0×10


上の問39と同じ仕事の量になり、
「仕事の原理」が成立していることがわかります。


  
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