簡単な物理実験や物理的おもちゃを
使った授業に対する生徒の反応

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 この試みに対する生徒の反応は、比較的好意的である。平成11年6月にアンケートをとった結果を以下に示す。集計分母は、新潟高校全日制普通科3年生理系生徒106名。本校では2年次より物理を履修し、6月現在「物理II」を履修中である。


問1 教材やおもちゃの紹介をどう思うか。

回答群 人数
(1) 興味がわき、物理理解にも役立つ。 57 54%
(2) 興味がわくが、物理とは無関係。 31 29%
(3) 興味わかないが、物理理解に役立つ。 0%
(4) 特に何とも思わない。 5%
(5) おもしろくなく、物理とも無関係。 0%
(6) その他 13 12%
その他の内容
 ・ものによります。
 ・最初のうちは(1)だったが、後になるとおもちゃの質が落ちD。
 ・2年の時に見たおもちゃの方がおもしろかった。
 ・大きな音がでるものは、ちょっと困る。
 ・授業の内容にあった物をやってほしい。
 ・物理が好きになる。
 ・授業時間が短くなるのがよい。
 ・授業時間が短くなるのでやめて。

 半数以上の生徒が「理解に役立つ」と答えており、8割以上が「興味深い」と答えている。よって、先に書いた「好意的」に受け取られているといえる。
 また、「授業時間が短くなる…」ことについては、本校では65分授業なのでこの試みを行ってもよいと判断したが、50分授業では毎時間というのは難しいかもしれない。


問2 興味ある科目・得意科目と苦手科目。

科目 興味・得意 苦手
現代文 35
古 典 19
世界史 10
日本史
地 理 14
数 学 45 27
物 理 47 29
化 学 34 30
生 物
英 語 25 43
体 育

 「物理」が好評なことが伺えるが、たとえば「数学」とは大きな差はないともいえる。また、「興味はあるけど点数はとれず苦手」という生徒もいた。
 文系科目の苦手が多いのは、理系クラスでのアンケートであることによる。


問3 興味深かった物、つまらなかった物。 

品名等 興味深い つまらない
ハートめがね 27
プログラムロボットWAOII 14
液体窒素の実験 12
共振鍋とワイングラス 10
ガリレオの温度計
デジカメ
水ロケット
ガイガーカウンター
トコトコマンモス
フラッシュペーパー
水飲み鳥
はねないボール
ポケベル
ジャンピングトイ
ブーメラン
ロケット自動車
 その他、好評だった物は、
・空中回転磁石
・偏光板
・3Dめがね
・ペットボトルの噴水
・メロディーパイプ
・衝突球
・コンデンサーの実験装置
 等々。
反対に大変不評だった物は、
・種々の本 (「プリンキピア」やアインシュタインの本)
                     好評 1  不評 7

 こちらから教材やおもちゃの名前を挙げずに記述してもらったので、直ちに思い出せないという答えも多かった。「ハートめがね」と「プログラムロボットWAOII」は、最近紹介したものなので回答数が多かったのだと思うが、それ以外はかなり前の紹介なので、名前の挙がったものは、よほど印象深かったのだと思う。また、ニュートンやアインシュタインの本をまわしたこともあったが、不評であった。


問4 その他、何でも意見など。

・おもしろいおもちゃを続けてほしい。
・日頃何気なく見ているおもちゃに授業で習った力のことや公式がはたらいていることを感じ、物理を勉強することは無駄ではないということがわかった。だから、少しでも紹介していくべきだと思う。
・「おもちゃ」といって実験するのはやめて。つまらないし、みんなにまわすと重くてじゃま。(コンデンサー実験装置)
・コンデンサーの大きなのは、大変理解の助けとなった。
・授業中におもちゃをまわすと、それに気を取られて先生の話をその部分聞けなくなるので少し問題かも。
・おもしろいし興味はわくけど、授業で大切なことを話しているときに回ってくると辛い。でも、おもちゃで、授業で勉強したことのイメージがわくこともあるので続けてほしい。


問4と問1のその他の回答を見て、今後考えなければならない点を3点挙げる。

(1) 授業内容にあったものを紹介するべきか、または授業内容と関係なく紹介するべきか。
 これについては麩沢と宮田で考え方が異なる。麩沢は授業内容と関係なく紹介している。そのねらいは、後で授業で学習したときに、「あっ、そういうことだったのか」と、発見する喜びを与えられること、それから、どの分野にも属さないものも、気にせず紹介することができること、などである。また、宮田はなるべく授業内容と関係あるものを紹介している。授業と関連するネタが見つからないときに、どの分野とも関係ないものを「今の分野と関係ないが」と前置きした上で紹介することになる。 どちらがより効果的かは難しいが、関連あるものを主体とした方が無難ではある。

(2) 授業中、生徒の手をまわることにより、授業を受けることの障害となりうることをどう考えるか。
 「大切なところでまわってくると辛い」という回答が数件あり、事実だと思う。また、コンデンサーの実験器(大型の平行板コンデンサーと、挿入できる誘電体、電気容量計のセット)などは、確かに生徒の机に置くには大きく、邪魔にもなると思う。
 考えるべきことは、そういうリスクの大きさと、得るものの大きさを比較して、どう判断するかである。ある生徒の手に興味深い教材が渡ったとき、少しの間授業に対する集中力がとぎれるかもしれない。しかし、生徒の様子を見ていると、切り替えをきちんとして、次の生徒の手に渡った後は再び授業に集中している。また、聞き漏らしたことがあれば、うまく補っている。そして、例に挙げたコンデンサー実験器については、「コンデンサーの大きいのは大いに理解の役に立った」という意見もあり、遠くから教員が操作するのを眺めるだけでいるよりは、自分の手で操作した方がかなり効果的だといえる。ただし、音が出るものは回せないし、より効果的な教材やおもちゃの精選が必要である。

(3) 教材やおもちゃの質を下げないために打つ手はあるか。
 (2)のこととも関連あるが、効果的な教材やおもちゃを紹介し続けるために、種々の文献を当たり、玩具店等にもときどき足を運ぶ。また、物理教員同士の情報交換も必要である。しかし、年間100時間以上、毎時間興味深いものを提供し続けるためには、これらの方法では限界を感じるようになった。実際、生徒のアンケートにも質の低下を指摘する回答が何件か見られた。
 これを解決しようとすることが、このホームページ開設の目的の1つでもある。


麩沢 祐一 ・ 宮田 佳則 (新潟高校

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