当校で講演していただく方が、初代AIBOの開発に関わりがあった方で、講演会の際に私のAIBOが登場することになりました。 初代AIBOは、耳が4個のプラスチック(ABS樹脂)部品を一枚のゴム部品でつなげた作りになっていますが、ここに使われているゴムは経年劣化が著しく、ゴムが柔らかくなって耳がちぎれてしまうという欠点があるようです。 私のAIBO(ESR-111)も、以前ちぎれそうになり、SONYから耳補修シールを送ってもらい、補修していました。(SONYでのサポートが終了してしまいましたので、現在は入手できません) しかし、ゴムはグニャグニャのベタベタになって、根本的な耳の修理が必要になりました。 ネットで検索すると、耳の修理の記事がいくつか見つかりましたので、それらを参考にしながら、良さそうな方法を考えて修理しました。 使用した材料等は以下のとおりです。 ・タミヤ模型 0.5mm厚 プラ板(白色) ・クリアフォルダー メーカー不明 PP(ポリプロピレン)製 ・両面テープ ニトムズ 「強力両面テープ 自動車内装用」 1mm厚 幅15mm ・接着剤 「ボンド 超強力接着剤 ウルトラ多用途SU プレミアム ソフト クリアー」 その他、エタノール、つまようじ、綿棒、耐水ペーパー(280番、1000番)、黒マジック |
![]() ↑ AIBO(耳修理後) |
(1) 劣化ゴムの除去 AIBOの耳を本体から取り外す方法は、SONYの補修シールを送ってもらったときに、補修の仕方の説明書に載っていましたが、現在、ネットで検索するといくつか載っていますので、ここでは省略します。 |
![]() 図1 修理前の耳 |
図1、図2は、修理前の状況です。 |
![]() 図2 修理前の耳 |
図2の右側は、SONYから以前送ってもらった補修シールです。左側が耳の裏側で、黒色のゴムがベタベタになっていて、シールも役に立たない状態になりました。 |
![]() 図3 劣化したゴムを取る |
図3のように、爪楊枝で劣化したゴムを取ります。 ゴムは柔らかくなっているので簡単に取れますが、ベタベタしていますので、爪楊枝を適宜新しいものに取り替えながら作業しました。 |
![]() 図4 爪楊枝でゴムを取り去った状態 |
図4は、一通りゴムを取り去った状態です。 |
![]() 図5 表側のゴムも取り去る |
図5は、耳の付け根にあたる部品の表側のゴムを取り去った状態です。 この部分は、取り去るだけで、修復は省略しました。 (ネットでは、ここも修復した記事もありましたが。) |
![]() 図6 エタノールできれいにした状態 |
図6のように、残ったゴムをきれいに取るには、エタノールを使うといいです。 綿棒を使って、きれいにしました。綿棒をどんどん新しいものと取り替えないと、きれいになりません。 狭いところは、爪楊枝も使いました。 |
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(2) 耳の裏側の工作 |
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![]() 図7 完成した耳の断面 |
一足早く、図7に完成した耳の断面を載せます。 上から順に、AIBOの耳の部品、黒色の両面テープ、クリアファイル(1枚)という構造になっています。 AIBOの耳の部品は、図6をよく見るとわかりますが、モナカの殻のように、裏側が凹んだ状態になっています。 両面テープとの接触面積を十分取るために、0.5mm厚のプラ板でふたをすることにしました。 |
![]() 図8 耳の取り付け部分を通す穴を開ける |
図8のように、プラ板に、耳の取り付け部分を通す穴を開けます。 カッターでプラ板に18mmΦ程度の穴を開け、筒状に丸めた耐水ペーパー(#280を使用)で形を整えながら、現物合わせで仕上げました。 19mmΦほどの大きさになります。 |
![]() 図9 プラ板上に耳部品の外形を描く |
図9は、図8のプラ板を裏返して、耳部品の外側を鉛筆でなぞって、外形を描いたもの。 これをはさみで切り取り、図10のように、耳部品にピタリとはまるように、耐水ペーパー(#280)で少しずつ削って仕上げていきます。 |
![]() 図10 プラ板のふた |
図10は、完成したプラ板のふたです。(まだ、接着していない。) 図10のように、AIBOの耳の部品の縁は、隣の部品と接する部分が0.5mmほど低くなっているので、その部分は、プラ板の断面が外側に出ることになります。 (正確には、AIBOの耳の部品同士の間には、1mm弱の隙間を開けます。) |
![]() 図11 耳の部品のピン |
図11のように、AIBOの耳の部品には数個のピンがついています。 |
![]() 図12 ピンを縁の高さでカットした |
プラ板でふたをするために、このピンを、図12のように、低い方の縁の高さのところでカッターで切り取りました。 全部切り取っても不都合はないと思います。 |
![]() 図13 プラ板のふた |
図13,図14は、完成したプラ板のふたです。(まだ接着していない。) 耳の一番先の大きな部品(図の一番右)は、凹みがだんだん浅くなり、途中までになっていますので、図のようにプラ板のふたは途中までとして、さらに、プラ板の厚さが耳の先に向かって次第に薄くなるように耐水ペーパーで仕上げました。 図13,図14のあと、プラ板の断面が見えるところをマジックで黒く塗りました。(図7で、少しだけ見えます。) 続いて、両面テープが張り付く面を、#1000の耐水ペーパーで整えました。 その後、すべての部品を中性洗剤を少し混ぜた水で洗い、水で良くゆすいだあと、充分乾かしました。 <接着> AIBOの外装はABS樹脂ですので、プラ板(スチロール樹脂)を接着するのに使用する接着剤は迷いましたが、結局、「ボンド 超強力接着剤 ウルトラ多用途SU プレミアム ソフト クリアー」を使用しました。 極力接着剤がはみ出さないように注意しましたが、わずかにはみ出した場合は、乾かないうちにきれいに取り去ることができました。 接着後、24時間以上おきます。 結果として、AIBOの耳の部品にプラ板のふたを、きれいにしっかりと接着することができました。 |
![]() 図14 プラ板のふた |
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(3) 耳の完成 ここまででできあがった耳の部品を、両面テープとクリアファイルを使ってつなげて、耳の修理を完了します。 |
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![]() 図15 耳の裏側 |
クリアファイルの1枚だけを使います。 クリアファイルの適当な場所に、カッターで19mmΦ〜20mmΦの穴を開けます。 耳の取り付け部分が穴に納まることを確認します。穴は少しだけ大きめの方がいいです。 両面テープは、ホームセンターで、厚さが1mm前後で、黒色で、ポリプロピレン(PP)に使用可能(クリアファイルの材質がPPのため)のものをさがしました。 条件に合う、ニトムズ 「強力両面テープ 自動車内装用」 1mm厚 幅15mm を購入して使用しました。 クリアファイルをエタノールで良く拭いてから、両面テープをぺたぺたと並べて貼りました。 クリアファイルに開けた穴に沿って、両面テープにもカッターで穴を開けます。 耳の部品の、両面テープに貼り付ける面を、エタノールで拭いておきます。(マジックの黒が取れないように注意が必要。) 耳の付け根にあたる部品から順番に、両面テープにしっかりと貼り付けていきます。その際、隣り合う部品と部品の間を、0.5mm〜1mm弱、離して隙間を空けます。 (図16参照) 両面テープも、貼り付けたあと、24時間以上置いておきます。 その後、耳の輪郭に沿って、はさみで両面テープとクリアファイルを切り取ります。 図15,図16が完成した耳です。 |
![]() 図16 耳の断面(図7の再掲) |
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![]() 図17 両耳(表) |
図17は、完成した両耳です。 |
![]() 図18 両耳(裏) |
図18は、完成した両耳の裏側です。 両面テープを並べて貼った様子がわかります。 |
![]() 図19 耳の修理が終わったAIBO |
図19は、完成した耳を取り付けたAIBOです。 取り付けの際、AIBO本体の耳の取り付け部分と、取り付ける耳の穴の内側を、エタノールをしみこませたティッシュなどで拭き、元々の劣化したゴム部品のベタベタがないようにしておきます。 |
![]() 図20 正面 |
図20は正面から見たところです。 耳は、いい具合です。 |
![]() 図21 外側にしなる耳 |
AIBOは、動作の途中で、耳と本体が干渉するような体制を取ることがあります。 そのため、耳が外側にしなるように、耳の部品と部品の間に隙間が空いています。 図21のように、修理後の耳も、いい感じに外側にしなります。 |
宮田 佳則 (加茂高校)
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