脳死と心臓死区別に理解を


  脳死や臓器移植をめぐる論議の上でいつも疑問に思うのは
医療関係者以外の人々が、脳死と心臓死をどの程度区別して
理解しているかということだ。
  脳死は人が死ぬ過程の中でも、ごくごくまれな状態と言っていい。
世間で多い、肝臓や腎臓を患ったり、がん、老衰、また脳卒中で
寝たきりとなり最後に肺炎で亡くなったりと、死亡原因の大半は
心臓死である。心筋梗塞ももちろん心臓が先に止まる。
  一方、元気だった人がある日突然、事故で脳挫傷を負う、水に
おぼれたり首をつったりして脳虚血に陥る、つまり突然に脳が
やられて病院に運ばれ、心臓は何とか動いているが、呼吸器を
つけなければ心臓が止まってしまう状態が脳死である。心の
準備もなく、脳死は突然やってくるケースが多い。このことは
移植を語る上で重要なポイントだ。
  私は臓器移植を待ち望む患者を救うべき医者の立場だ。しかし
予期もせず、自分の家族が事故に遭い、脳死判定により、脳死と
宣言されても、果たして死として受け入れるだろうか。心臓が動き
肌が温かいうちに、臓器移植の手続きを冷静にとれるだろうか。